〜第2章第8話 嵐のあと、アゾレス近海にて。〜
翌朝、僕らはリスボンを出港しカリブ海の玄関口サンファンを目指す。
まずはその中継地点アゾレスを目指すのだ。
ニーナは昨夜からずっと怯えているが、とりあえず船の仕事はして欲しい…
航海自体は順調だったはずが…6日の夜アゾレスまであと少しというところで嵐にあってしまった。
「船長!舵がききません!船が流さられてまさぁ!」
「あぁぁぁ、ヤダヤダヤダ!きっと幽霊の祟りよ〜」
「ニーナいいから帆をたため!流されて沈没するぞ!そしたら幽霊の仲間入りだ!」
「あーーわかったわよぉ、もぉ!」
3時間程嵐と格闘し、なんとか収まったが…
「ここはドコだろう。大きく針路から外れてしまったな、夜明けを待つしかないか…」
夜明け近くになると辺り一面霧に包まれた。
霧に包まれて数刻後、異様な光景が眼前に広がっていた。
「なんだ…これは。船の残骸の山…」
「まるで船の墓場ね…私達とんでもないトコに迷いこんでしまったのカモ…」
異様な雰囲気が包む中、船を進める。どこまで行っても船の残骸、残骸、残骸…
先の見えない不安と恐怖が船内に広がる中…
「あー怖かった!」
「 ! 」
船荷を積む倉庫の中から女の子があらわれた。
「あら、かわいい子!でも乗ってたかしら?」
僕も無言でニーナに同意する。
「ちょっと迷っちゃって。暗くて怖かった〜。」と女の子はニーナに抱きつく。
「ねぇ、ジェイ!こんな小さな子放っておけないわ!街まで送っていこう?」
「うん、そうなんだが…正に僕達が迷子なんだけど。」
「そうだな、安全なところまで送っていこう。」
「ほんとう?じゃあ あぞれす って街まで連れてって!」と女の子は言う。
「ちょうど目的地は一緒だな。よし行こう!」
そうして霧の中を再び進む。
先ほどまでとは違って何かに導かれているように進むべき方向がわかる気がしていた。
数刻後、霧の中を抜ける。眼前にはアゾレスの街並みが広がっていた。
船を岸につけ上陸しようとした時、住民達が近寄ってきた。
「あんた達!よくあの嵐の中を無事に着いたな!行方知れずになった船も沢山いるのに!」
「えぇ、遭難しかけました。そうだ、この街に女の子を降ろそうと…」
「女の子?あんたの仲間にはそこのお嬢さんしか女はいないようだが?」
「ん?おかしいな?」
船中探しても何処にもいなかった。
住民達に事の顚末と女の子の特徴を伝えた。
住民の一人が急に泣き出した。
「あんたたち…その女の子はオレの娘だ…。三年前船から落ちて、そのまま…。」
船員全員が息を飲む。
「娘は…笑っていたかい?船長さん。」
「えぇ、ずっと笑っていました。」
「そうか…ありがとうな。船長さん…。」
僕達は街外れの丘にある女の子の墓に花を添えて、助けてくれた感謝と冥福を祈った。

今年も一年お世話になりました(=゚ω゚)ノ
来年もストーリーは続きます。引き続き応援よろしくお願い致します。
〜今年も一年お世話になりました(=゚ω゚)ノ〜
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